日本の伝統工芸やそのわざは、古来その品を届ける相手云わばユーザーを意識して作ってきた。
そんな中で技術だけではなくその意匠デザインも文化が加味された仕事がされている。
私は、漆の中でも蒔絵という仕事に興味を持ったのは、その事が古来からの名品に見えたからである。
小さいながら、江戸寛政年間からコツコツ漆業を繋いで来た工房を、蒔絵という仕事にシフトさせたのもそれが所以であり、世界に繋がっていく為にも、そこが重要であると思ったからだ。
長年周囲の漆に関わる環境を見ていると、漆芸をはじめとする伝統工芸は仲介者や商人に頼る状況が制作の現場まで変化させている事に危惧を感じて、産地の中でも色々な場で話をしてきたが、何も変化が見られない20年以上が経ってしまい、独自に海外に出向く事をここ10年ほどやってきた。
世界のものづくりは、今だに基本を大切にしていたから現在がある事を目にしてきた。
それは、エルメスやカルティエのブランドだけではなく、機械式時計や高級万年筆の制作の場は流石である。
しかも、それらは市場(個人ユーザーまで)を見据えた商品や仕事である。
技術を誇りにしてきた日本、日本を代表するメーカーは世界では名前は知られても商品そのものが二流になってしまっている事に自覚がない。
世界の一流のものづくりをもう一度しっかり見て欲しい。それはメーカーだけではなく、日本のものづくりを紹介しようとする紹介者にも、日本のものづくりの本来の良さがどこにあるかをしっかり見据えて、応援してもらいたいものだ。
(続く)
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