パリの応用美術の名門校「エコール・ブール」の事を前に出しましたので、伝統工芸の技をいかしている欧州のメーカーと日本との違いがどうなのか考えるヒントになれば良いと思います。
「エコール・ブール」は世界各国から技術やデザインを学ぶ為入校しているそうです。
私は、パリやイギリスで象嵌を学ぶ方から聞いたのは、ルーブルの装飾品や家具など工芸品の修理修復の技術を継承させる役割ももっている工芸学校だと聞いていました。
古くから伝わる工芸に関する道具もありながら、最新の工具も使える環境で、もちろんルーブルをはじめとする美術が間近にあるから、技術だけではなく美術アートに学ぶ事も多いのだ。
工芸が技だけではなくデザイン能力も高められる要素は、エコール・ブールの教育方針にも所以していると考えられる。ちょうどメゾン&オブジェに出展していた期間に、卒業制作品展示でエコール・ブールが公開されると聞き、内緒だが展示会場を抜け出して、制作品や校内を見る機会を得たのだ。
卒業制作作品の写真の掲載は差し控えるが、フランスらしく工芸の技に加え、応用美術(欧州では必須)を学んだらしいアートを感じる作品が並んでいて、技術だけでは卒業を認めない校方針を感じた。
だから、ここを卒業した工芸職人は、ブランドの製作の現場やあちこちから卒業を待たれているのだ。
故に有力な企業やメーカーからの期待されていてメセナも受けている。
日本の工芸の技を教える環境とは、根底からの違いを感じる。
日本では工芸作家の登竜門は、伝統工芸展や日展をはじめとする美術展での受賞である。そこで文化庁が関わってくるのだ。一般企業やメーカーとは接点を持てるようになるのは、いろいろ障壁がある様に思う。
かたや欧州では卒業と同時にブランドやメーカーにスカウトされるようだ。
日本は作家を目指し、欧州や海外は能力があれば制作ポストが用意されている。
これらの違いがなんと、日本の企業が世界のブランドになりえない所以でないかと考えるのは乱暴だろうか。前にも書いたように、世界のブランドや分野は違うが、新興のアップルのモノづくりまで、何か大切なものづくりの要素を共通して持っているように思う。
あの、となりの国のサムスンが危ういのは何故かを、日本のメーカーは気がついているはずだが、ひよっとして気づいていない??
かも知れません。
ルーブルの修理修復の技術を教えている 「エコールブール」の情報
エコールブール
フランス大使館での紹介ページ
http://www.ecole-boulle.org/
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